「はい、細川さん、お疲れ様でした」とあこが言った。
「お疲れ様でした。明日からもがんばりましょう」と私は笑って言った。
編集部に残るあこに見送られ、私は帰路についた。暗い夜道を歩きながら、ふと先輩とのやりとりを思い出した。
「あの人、どうしてあんなことを言ったんだろう」
どこか心配している自分がいた。でも同時に、先輩の言葉に胸がドキドキと高鳴っていることに気づいた。何故だろう、今まで全く意識したことがなかったはずなのに。
家に着くと、すぐにシャワーを浴び、寝床に入った。明日も早いのになぜか目が冴えてしまって、布団の中でウダウダと考え込んでしまった。
「でもまあ、あの人もたまには面白いことを言うから……。うん、そうに違いないわ」
自分に言い聞かせるように、私は微笑みながら眠りについた。
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