私は先輩に嫌われている③

「……っ!」

突然、ドアが開いて部長が入ってきた。私は胸が高鳴るのを抑えきれなかった。まるで密室の中で取り残されてしまったような気持ちだった。

「お、生田部長! どうかされましたか?」

「みのりさん、こんな時間にまだ残っているんですね。お疲れ様です」

部長は穏やかな声で言った。

「はい、これからちょっと校正をして帰ろうと思っていたところです」

「そうですか。私もちょっと書類を取りに来たところでした。これから出かけるんですが、帰りに手伝ってあげましょうか?」

「え、いいんですか? ありがとうございます!」

私は驚きと感謝の気持ちで頭を下げた。生田部長と一緒に帰れるなんて、とても嬉しかった。
そこで私は千羽さんとのことを思い出し、顔が熱くなってしまった。

「あ、でもその前に、ちょっと用事があって……」

「用事ですか?」

生田部長は不思議そうに私を見た。

「はい、あの……」

私は千羽さんとのことを話すのも気が引けたし、何かいい口実を考えなければならなかった。

「……あ、あの、実は私、本を返しに行かなくちゃいけないんです」

「本ですか?」

「はい、その……明治文学の本を借りたんですが、もう期限が過ぎてしまって……」

「そうですか。それなら、私が送ってあげましょうか?」

「え、本当に? ありがとうございます!」

生田部長の優しさに、私は感激していた。

「それでは、早速行きましょうか」

部長が言って、私たちは一緒に出発することになった。

私は胸がドキドキと高鳴るのを抑えきれず、生田部長を隅目でチラチラと見ていた。彼のオシャレなスーツ姿がとても格好良かった。しかし、私は彼と付き合えるわけがないと自分に言い聞かせた。

彼は出世頭で優秀な人材で、私はただのOLにすぎない。それに、私には彼に代わる人生の相手がいる。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

早寝早起き朝うどん

コメント

コメントする

目次