生田部長との食事の約束を練る中、私の胸の奥には、千羽さんとの出来事がぐるぐると渦巻いていた。
そんなある日、部長から連絡があり、彼が料理が得意ということで、私を自宅に招待してくれることになった。
当日、部長の家に着くと、彼は既に料理を始めていた。
「ようこそ、みのりさん。お待ちしておりました」
「お邪魔します。わあ、すごい!」
彼のキッチンは、まるで料理番組のセットのようだった。テレビ台の上には、生田部長がよく見ると、私が担当する文芸誌が置かれていた。
「これ、僕も読んでますよ。さすがみのりさんが担当してるだけありますね」
部長は、手際よく調理を進めながら、私と話をしてくれた。彼の語る熱意と情熱に、私はますます心を惹かれていった。
そして、部長が手作りのデザートを出してくれた頃、私はつい、千羽さんとのことを口にしてしまった。
「あの、生田部長。最近、ちょっと困ったことがあって……」
私が不安そうな表情をしたため、彼は心配そうに私を見つめた。
「どうしたんですか?」
「実は、私の同期の千羽さんに、ちょっと気になることを言われて……」
私は半分謝罪するように、部長に話し始めた。
「『みのりさんが、官能小説を読んでる姿を見て、変な勘違いしちゃった』って……」
そう言うと、部長は苦笑いしながら私を見た。
「そうですか。まあ、それぐらいのことですよ。あなたがどんな本を読もうが、私にはそれ以上に大切なことがあるんです」
生田部長の言葉に、私は顔を赤らめながらも、ほっとした気持ちになった。
そして、その夜、私たちは部長の手料理を楽しみ、お酒を飲みながら、深い話をすることができた。
私は、生田部長のことがますます好きになっていた。
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