私は先輩に嫌われている⑤

「あの……千羽先輩。このことは忘れてください。絶対に他の人には言わないでくださいね」

私は恐る恐る口を開いた。

「そんなこと言われたって、もう書いちゃったんだから仕方ないでしょ？」

先輩は笑いながら私の肩を叩いた。

「でも……」

私は落ち着かなかった。せっかく尊敬する先輩に、こんなことを見られてしまったことが悔しい。

「わかったよ、心配しなくても大丈夫さ」

そう言いながら、先輩は私に優しく微笑みかけてくれた。

そのとき、編集長の生田部長が現れた。私たちは驚いて先輩が持っていた原稿用紙を挟んでいた。

「どうしたんだ、こんなところで何をしている？」

生田部長が私たちに問いかけた。

「ああ、ちょっとしたことです。細川さんがあれこれ悩んでいるから助けてやろうかなって思ってね」

先輩が生田部長に笑顔で答えた。

「ふむ……」生田部長は私たちを見つめながら考え込んでいた。そのとき、生田部長が口を開いた。

「そうだな、細川さん。せっかくならあなたも書いてみたらどうですか？」