そうこうしているうちに、あっという間に夕方になってしまった。
「生田さん、もうこんな時間ですけど……」
「ああ、そうだな。帰るとするか」
そう言って生田部長は立ち上がった。
「ちょっと、私、手伝ってもいいですか?」
私は帰るまでに少しこの文芸誌の原稿を進めたかったのだ。
「大丈夫か?ここまで残ってるのも、お前だけだぞ」
生田部長は優しい笑顔で言った。
「ええ、大丈夫です。あと少しで校正が終わります」
私は返事をして、生田部長が帰った後も原稿を校正し続けた。
夜遅くなって、ついに校正が終わった。
「やっと……」
私は一人呟いた。
「お疲れ様です」
あこが現れた。
「あこちゃん、こんな時間に……?」
「みのりちゃんがまだ残ってるって聞いて、心配で来ちゃった」
あこはやさしく微笑んだ。
「ありがとう。でも大丈夫、もう帰ります」
私は笑ってあこに返事をした。
「じゃあ、私も帰るね」
あこは笑顔で私に手を振って、去っていった。
私は一人残されたが、気持ちはすっかり晴れ晴れとしたものになっていた。
「生田さんも、あこちゃんも……私を助けてくれる人たちがいる」
私は思った。
そして、疲れた体を引きずりながらも、帰り道を歩き始めた。
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